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労働時間基準、年収基準を現行よりも下げた場合、1つの会社での労働時間や収入が第3号被保険者の基準に満たないが、2つ以上の勤務先で働いており、2つの勤務先の労働時間・賃金を合算すると基準を満たすような場合が出てくるかもしれない。
原則的には多重就労をしている労働者について、事業所が他の会社での所得や労働時間を正確に把握できていれば問題はない。 基準の変更によって期待されたとおりの適用拡大を実現するためには、その点の整備が不可欠である。
多重就労にはこれまでよりも注意が払われる必要があると考えられる。 第2は、移行期の賃金変化の問題である。
社会保険料は、1般的に、名目賃金に転嫁される可能性がある。 大きな制度変更の場合、転嫁の度合いが明確に認識される可能性があるが、この第3号被保険者の収入、労働時間の基準変更はそれにあたる可能性がある。

経済学的には、転嫁・帰着は労働需要と労働供給の弾力性によって決まると考えられている。 しかしながら、旧労働省は、1991年に、派遣労働者について、社会保険料の企業負担分の転嫁を規制する指導を行った(平成3年9月24日参議院労働委員会の議事録)。
第3号被保険者の社会保険加入について上述の制度変更が行われた場合、この点についてどのような対応をするのかは、この論文が執筆されている段階ではあまり明らかにされていないようである。 しかし、この問題は、特に適用拡大が広範囲である場合には、多くのパート労働者の手取り賃金に影響を与えると考えられる。
とりわけ、2001年ごろからワークシェアリングの議論が盛んになってきている中で、副業が許可される度合いが高まってきており、その側面からも多重就労は増える可能性がある。 社会保険給付支払のコスト厚生年金基金がある企業における年金給付の費用厚生年金基金は、その企業の退職者に追加的な年金を支払う企業年金基金である。
厚生年金基金は代行制度を通じ、厚生年金と密接にかかわっている。 厚生年金給付には所得比例給付の部分があり、その給付額は被保険者期間中の拠出(標準報酬)に比例して決まる。
企業に厚生年金基金がある場合、報酬比例部分の給付(賃金スライド・インフレによる物価スライドの部分を除く)は企業の厚生年金基金によって支払われる。 基金が将来負担する報酬比例部分の給付の割引現在価値は高齢の労働者ほど多額になる。
これは高齢な労働者への給付は近い将来に生ずるのに対し、現在若年である労働者への給付は遠い将来にしか生じないためである。 したがって、厚生年金基金がある企業では、より高齢な労働者の年金給付コストは若い労働者のそれよりも高くなる。
企業は、年金コストの観点から高齢の労働者の採用に慎重になるかもしれない。 というのは、他の条件を1定として高齢労働者のほうが年金コストが高くなるからである。
健康保険企業が健康保険組合を形成している場合、70歳未満の被保険者および被扶養者の医療費は健保組合によって支払われる。 しかしながら、保険料率は健保組合に加入している労働者のなかでは異なる水準に設定することはできない。
したがって、健康な労働者は自身が費やす医療費より多額の保険料を支払うが、健康でない労働者は保険料支払以上に医療費を費やすことになる。 この場合、医療費を多額使う加入者を加入させると健保組合の経済厚生は低下するであろう。

医療費は個人間でかなり差があるものである。 高齢労働者は若い労働者ほど健康でないので、企業は健保組合に高齢の労働者を加入させることにおいて企業は慎重であるかもしれない。
企業は高齢パート労働者の労働時間を短く設定し、彼.彼女らを企業の健康保険に加入させないようにするかもしれない。 パート労働者に関する考察被用者保険に加入すれば、フルタイムとパートタイム労働者とで、健康保険給付・健康保険料率には何も違いはない。
したがって、健康保険ではフルタイム労働者と健保に加入しているパートタイム労働者の間で健康保険上の扱いにまったく違いはない。 1方、厚生年金基金についてはフルタイム労働者とパート労働者とで重要な違いがある。
通常、パート労働者は企業年金給付(加算部分)は受け取れない(通常、企業が企業年金を構築する際にそのような設定にしている)。 しかしながら、厚生年金基金のある企業で働くパート労働者は、基金によって代行給付される報酬比例部分の給付を受けとるために企業の厚生年金基金に加入しなければならない。
労働者が10年間以上厚生年金基金に加入すれば、彼(彼女)の厚生年金給付の所得比例部分は厚生年金基金(社会保険庁からではなく)によって支払われる。 他方、労働者が企業で働いた期間が10年未満であれば、所得比例部分は企業の厚生年金基金から厚生年金基金連合会に移管される。

したがってこの場合、企業を退職する時点で、企業は労働者の将来の所得比例部分の割引現在価値を厚生年金基金連合会に支払うことになる。 この場合の割引現在価値はより高齢な労働者ほど高くなるので(高齢な労働者のほうが給付がより近い将来に生ずることになる)、企業にとっての年金コストは高齢労働者のほうにより高くなる。
メデイケアヘの政策的含意。 今日、医療システムを運営する政府にとって中心的な課題の1つは、公的医療保険に上乗せされる追加的医療保険を許可するかどうかという問題である。
すべての先進国では、国民の相当な割合に対して公的保険が提供されているものの、すべてのサービスや最高度の医療まで公的保険の保険対象となっているとは限らない。 したがって、政府は公的医療保険の基本的範囲に上乗せする追加的医療保険の購入を許可するかどうか、許可するとすればどのような制限を設けるかを決定しなければならない。
追加的医療保険は次の3つの種類に分かれる。 最も直接的なものであるが、公的医療保険対象外のサービスに対する保険である。
このような例として、アメリカのメデイケア(高齢者のための国民医療保険制度)やカナダの公的医療保険で保険対象外となっている外来処方菱薬が挙げられる。 公的医療保険で求められている自己負担部分に対し保険をかける種類のものである。
公的医療保険はしばしばその加入者に、医療コストの1部分を自己負担することを求めている。 もし、このような追加的医療保険が許されるのであれば、公的保険の加入者は自己負担部分を減らすことができるかもしれない。
公的保険でも提供されるものの、民間医療保険からの提供のほうがより好まれる種類のものである。 いくつかの国では、サービス利用に対する財政的制限から特定のサービスに対して待ち行列が存在している。
人々は民間医療保険を購入することにより公的医療保険の枠外に出て、その結果、公的な待ち行列を飛び越えることができる。 これら3つの追加的医療保険の役割はそれぞれ大きく異なっており、したがって、経済学的な含意も異なっている。
保険対象外への追加的医療保険は最も論争の少ないもので、多くの国ではこのような追加的医療保険を許可したり、促したりしている。 しかしながら、このような保険でも公的部門に対して2つのルートから影響する可能性がある。


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